本気の恋を、教えてやるよ。




二人きりの会議室で、いつまでそう抱きしめあっていたか。


俺は、涙腺が壊れてしまったかの如く流れ続ける涙を気にもせず、茉莉を見つめていた。


茉莉も、何かに囚われて動けなくなったかのような顔で俺を見上げている。


「……こんなのは、言い訳にしかならないんだけどさ」

「え……?」

「俺、傍にずっと居てくれる存在が欲しかったんだ」


複雑な家庭環境だったわけでは無い。

所謂鍵っ子で、あまり家に帰らない家族ではあった。でも愛されてなかったわけじゃない。だけど、いつも心のどこかしらが寂しいと泣いていた。


そんな寂しさを埋めてくれる存在をずっと求めてた。


会いたいと思ったら会えるような。

顔を合わせて、好きだと言い合えるような。


──そんな関係に、憧れていた。


「だけどその反面、怖くもあった」


心を許して、よりかかって、でもいつかその拠り所が消えてしまったら?



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