本気の恋を、教えてやるよ。
ぼんやりとして、まるでそれが正しいことのように。
駒澤くんに伝えたのと同じように告げれば、馬鹿みたい、と梓ちゃんは吐き捨てた。それにハッとする。
いつも何だかんだ言いながら私の味方をしてくれる梓ちゃんは、そこには居なくて。
その鋭い目に浮かぶのは、呆れと、怒りと。
……とてつもない、悲しみだった。
「駒澤だってきっと、茉莉じゃなきゃ駄目だったわよ」
そんなことない、と言えなかったのは。
梓ちゃんの瞳が、別れ際の駒澤くんによく似ていたから。
「悪いけど今回の事は賛成できない」
まあ私はいつだって反対だったけど、と梓ちゃんは嘲笑した後で、真っ直ぐに私を見つめて。
「自分の気持ち、押し殺さないでね」
まるで祈るように、私の手を取った。
六月中旬。
目に鮮やかな新緑の中で、私はそんな爽やかさとは程遠い憂鬱な気分で毎日を過ごしていた。