本気の恋を、教えてやるよ。



やっぱり、取り戻したくて。


茉莉が気まずい思いをすると分かっていながら、少しでも関わりを持ちたくて、結局は自分から近付いて。


だけど関わってしまえば。

会話を、交わしてしまえば。


逃げられなくなった。想いは溢れて、蓋をしても押し返されて。


傍に居てくれと縋れば茉莉が断れないことを分かっていて、それでもなりふり構わずに捕らえた。


「なかなか性格悪いよな、俺も」


茉莉のことになると冷静でいられない。

全てを自分のものにしたくて、暴走して。


……でも、茉莉の瞳にもう少しも俺が映っていないことを知ったら、さすがの俺も諦めるしか無いじゃんか。


あんな切なそうに、愛しそうに、駒澤を目で追って。本人は気付いてないんだろうけど。


「ずるいんだよなあ……」


なんだかんだ言って俺は茉莉に弱いから。


気持ちが一滴もこちらに零れてこないのに、鳥籠の中に閉じ込めるほど意地悪くもなれなくて。




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