本気の恋を、教えてやるよ。





*º楽斗side.




本当あいつ、どういうつもりなんだよ……っ!


あてもなく廊下を歩きながら、苛立ちは募るばかりで。

思わず舌打ちすれば、ちょうど通り掛かった社員が怯えたように俺を見た。


俺と別れた稲葉は、筒井とヨリを戻したのかどうなのか。


その辺のことはよく分からないし知りたくもないけど、時々一緒に帰ったりするくらいの仲になっていることは知っていた。


しばらく社内をぐるぐると歩き、五分ほどしてから自席に戻る。勿論、デスクルームに入る前に稲葉の姿が無いことを確認し。


無意識のうちに溜息をつきながら座ると、壱人が小声で声を掛けてくる。


「まーた逃げてたのかよ」

「うるせえ」

「いつまで鬼ごっこしてるつもりだよ」


揶揄うように問われた声はどこか真剣で。


……ここ最近になってから何故か、稲葉が俺に話しかけようとしてくる。




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