本気の恋を、教えてやるよ。



……ビビらせたか?と不安になりながら彼女と視線を合わせると、彼女はぱちりと目を瞬いたあとで、ありがとう、と受け取った。


その時、指先が触れ合い、ビクッと跳ねてしまいそうになるのを根性で押し込める。


彼女は氷水を頬に押し当てると、その冷たさにほっと力を弛め、目を閉じた。


良かった、とこちらも安堵するのと同時、そんな無防備な表情にすら心臓が不規則に鳴るから困る。


いつまでも突っ立ってるのもな……。


そう考え、彼女──稲葉茉莉の隣に倣うように座ったがすぐに後悔した。


思ったよりも近いところに座ってしまったせいで、甘い香りが濃くなって、息遣いまで感じられてしまいそうだったから。


そもそも、まともに話したこともないのにいきなり密室に二人きりはハードルが高い。



< 40 / 392 >

この作品をシェア

pagetop