本気の恋を、教えてやるよ。


どうしたもんかな……一度座ったからには、立ってわざわざ微調整するのも変だし……。


遠い目でそんなことを考えていると、突然隣の稲葉が慌てだした。どうやら、俺が地面に座ることに慌てているらしい。


先に自分の心配をしろよ、と思いつつ、逆手にとって稲葉を椅子に座らせる。


稲葉は俺が椅子に座ったことにホッとした顔をした後で、あれ?と首を傾げた。


それから、兎みたいにまん丸の目がこちらをきょとんと見るので、笑ってしまいそうになって頬の内側を噛んだ。


くるくる表情が変わるの、可愛すぎるし面白すぎる。


「あの……駒澤くん?」

「なんだよ」


色々と耐えたり我慢したりしてたせいで、また冷たい返しになってしまい自己嫌悪。


もっと他に言い方あっただろ……。


稲葉からすれば初対面も同然なのに、怖がらせてどうする。


案の定、大きな目は少し戸惑ったように揺れていた。



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