本気の恋を、教えてやるよ。


「えっと、どうしてここに居るのかなと……あっもしかしてこれからここ使う!?」


……ま、当然の疑問だよな。


同期とはいえ話したことも無い男が、会議室に乗り込んできて居座ってるんだから。


慌てて立ち上がって出て行ってしまいそうになる稲葉をひと睨みで制し、どう答えようかと悩む。


まさか、普段からついつい見かけると目で追ってて、今日もこのフロアに用事があって降りてきたら偶然見つけてしまった、とは言えまい。


「妻夫木に、アンタのこと見かけなかったかって言われて、上から降りてくる時丁度アンタの事見たから、そう言ったら様子みてこいってパシられただけ」


悩んだ結果、そう伝える。


嘘は言ってないし、妻夫木の後押しがあってここに乗り込んだのも本当だ。


稲葉は苦笑したあとで、困ったようにこちらを上目で窺った。


やめろやめろ、可愛い上目遣い。


「ごめんね、仕事中なのに」

「……別に」



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