本気の恋を、教えてやるよ。




ここで引いてしまったら、もう二度と慶太に立ち向かえない気がして。


だけど。


「俺の為ってなんだよ。……俺の為に何かしたいんだったら、ずっと俺の傍にいろよ……!」


だけど、慶太がそんなふうに。


酷く悲しそうに、苦しそうにそう言うから、私はまた、いつものように何も言えなくなってしまう。


なんで私はこんなに弱いんだろう。


こちらを見下ろす慶太が、捨てられた子供のような、今にも泣きそうな顔をしていて。


そんな顔をされると、直ぐに負けてしまう。さっきまでの自分の意思が揺らいで、保てなくなって、慶太を……目の前のこの人を、守らなくちゃ、って気持ちになってしまう。


顔も唇も真っ青にして、震えながら私を抱きしめた慶太を……私は、ついに拒めなかった。


思わずその広い背中に手を回し、抱き締め返してしまう。


この甘さが悪いのは、わかってる。


それでも私は、慶太を裏切れない──……。




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