角砂糖より甘い先輩の溺愛は、今日も止まらない。

「ねえ、楠木さん。ほんとのこと言ってよ」


このままじゃ私、大変な目に遭いそう……。


逃げなくちゃ……!そう思った私は、椅子から立ち上がり走った。


「──あっ、ちょっと待ってよ楠木さん!」


しばらくして教室から声が聞こえて、後ろを振り向くとクラスメイトが追いかけてきた。


「楠木さん待ってよー!」


まだ追いかけて来る声がいくつも聞こえる。


うっ、まずい……。

このまま走ってたらいつか追いつかれる。

どこかに隠れなきゃ。でも、どこに?


焦ったせいで前方確認を怠って、ドンッと何かにぶつかった。


「きゃっ!」


声をあげて、スローモーションのように後ろへ倒れかける。


「っぶねー……」


だけど、想像していた痛みはやってこなくて。

何かに抱き止められる。


「大丈夫だったか?」


あれっ、この声って……


「先輩……」


どうやら先輩とぶつかってしまったらしい。
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