角砂糖より甘い先輩の溺愛は、今日も止まらない。

「瑠衣、なんでそんな息切らしてんの」

「あっ、えっとこれにはわけが……」


説明をしようと思っていたら「楠木さーん、どこー!」後ろの方で声が近づいて来る。


「先輩ごめんなさいっ、ちょっと今急いでて……っ」


先輩の隣をすり抜けようと思ったら。


「瑠衣、こっち」


先輩が私の手を引いて、開いていた資料室へ入り込む。


そのすぐあとに、パタパタパタッと無数の足音が響いた。


「あれー、楠木さんいない。たしかにこっち行ったはずなのに」

「おかしいなぁ……。それとも向かうの方行ったのかな」


わっ、もうみんな来てる……。

見つかっちゃったらどうしよう。また誤解されちゃう。


「どうする? 向こう行ってみる?」


声しか分からなくて、みんながどこを見てしゃべっているのか分からない。

少し気になって、そうっと資料室の外を見ようとする。


「バカ、やめろ」


グイッと後頭部を引き寄せられて、先輩の腕の中に戻される。
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