角砂糖より甘い先輩の溺愛は、今日も止まらない。
「瑠衣、きっとこれはなにかの間違いだって……!」
私の心が欲しい、って先輩は言った。
でも、きっとあんなの嘘だったんだよね。
だって、先輩の心の真ん中にいたのは彼女だから。
だから、私がどんなに頑張ったってきっと敵わないし届かない。
「……行こ、つばきちゃん」
これ以上、2人を見ていることができなくて私はその場を離れる。
「えっ、ちょっと待ってよ、瑠衣! このままでいいの? 先輩に声かけなくていいの?」
声なんて、かけられるはずがない。
「……いいの」
あんな仲睦まじい姿を見ちゃったら、私声をかける自信がない。
「でも、瑠衣」
「私、べつに大丈夫だよっ。だって私たちの関係は、ただお菓子をあげる先輩後輩としてだから……」
この気持ちは、好きじゃない。
先輩のことを好きなわけじゃない。
──そう、思いたかった。
「でも瑠衣、」
「ほらっ、早く行かなきゃ先生に怒られちゃうよっ」
つばきちゃんがなにかを言いかけていたけど、私はそれを遮った。
ただ、ひたすら笑顔を浮かべた。
少しでも気を抜いてしまえば、泣いてしまいそうだったから。