もう一度、その声が聞きたかった【完結】
あれから眠れない日が続いていたが
仕事は待ってくれない。


取引先の担当者はだいたい月に1〜2回
商談や売り場メンテナンス
メーカーの勉強会などで顔を合わせる。

WANZU(ワンズ)の担当は店長の私。

【Waz(ワズ)】は大阪店の売上げの
上位を占めていて絶対ミスは許されない。

他のスタッフに任せるのは無理だった。


今日、圭介は売り場メンテナンスにやってきた。

アロマキャンドルの香りサンプルを交換して
販促物をセットしていた。

『倉木店長、いつもお世話になっております。
今日はリーフレットが新しくなったので
お持ちしました。売り場にも設置しましたが
接客やレジでの配布にも使ってください。』

「わかりました。ありがとうございます。」

『では今日はこれで失礼します。
また来月よろしくお願いします。』

「ご苦労様です…」

彼は見事な営業スマイルを私に向け去っていった。

私の顔はかなり引き攣っていただろう。


ずっと胸が痛い…。

あんなに会いたかった彼に
会うのが苦痛になる日がくるなんて…。
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