日直当番【完結】
 木曜日の昼休み、私は由理と皆川と一緒にテスト勉強をしていた。てっきり皆川は由理と付き合い始めたことで舞い上がって勉強が手につかなくなるのかと思ったら、ここのところ猛勉強していた。どうやら全教科50点以上取ったら由理からご褒美があるかららしい。現金なやつだ。

「おーい、神崎。1年生の子が呼んでるぞ」

 教室の後ろの出入り口でクラスの男子が私を呼んだので振り向くと、そこには永井さんが立っていた。廊下で私は、初めて永井さんと対面した。永井さんは小柄で色白のいかにも女の子って感じの子だ。彼女の存在は知っていたとはいえ、初めて話すのでいささか緊張する。

「ああ、進藤くんはあいにく今いないけど…」

「いや、今日は神崎先輩に用があって来たんです」

「え?」

「えっと、ずっと気になってることがあって…」

 永井さんはミディアムショートの髪を耳にかけ、俯きがちになんだかモジモジしている。

「神崎先輩って、進藤先輩と付き合ってるんですか?」

「え」

「神崎さんと進藤先輩、仲いいみたいなので、どうなのかなって思って」

「まさか。私があんな変人と付き合うわけないじゃん」

「変人って…。たしかに進藤先輩って変わってますよね」

 永井さんは口元に手をやってふふっと控えめに笑った。

「私、期末考査が終わったら、進藤先輩に伝えたいことがあるんです。それじゃあ失礼します」

 永井さんはパタパタと小走りで去って行った。靄のような、砂嵐のような、焦燥感にも似た何かに心をかき乱される。短い会話の中に爆弾を投げ込まれたかのような衝撃で、その場から動けなくなってしまった。
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