日直当番【完結】
「そうですか。あ、服、すいませんね。女性モノがいいんでしょうけど、母親のものを貸すのも気が引けて」

「いいよ別に。貸してくれるだけありがたいし。ぶかぶかだけどね」

「たしかに、華奢な身体に大きな服はちぐはぐしていますね」

 進藤くんは顎に手を当てて何かを思案するように私を見ている。

「なに」

「…いえ、別に」

 ふいっと私から目を逸らす。

「なんだよ気持ち悪いな。まさかヘンな気起こしちゃったんじゃないのぉ?」

 私は意地悪するみたいに進藤くんに人差し指を向けてクルクルと回した。

「はっまさか。あなたにヘンな気を起したら気が狂ったも同然です」

 進藤くんは足を組みながら言った。

「うーわっ何よそれ!いちいち失礼な男だな」

「これでも気を遣ってるつもりです」

「そりゃお気遣いどーも」

 私は体育座りの膝に顔をうずめた。

 しばらく経ってキッチンの方からやかんの鳴る音が聞こえた。

「お湯が沸いたようですね」

 進藤くんは立ち上がり、やかんのもとへ行ってしまった。

「はい、どうぞ」

 進藤くんの声でふと顔を上げる。

「睨まないでください」

「別に睨んでません。目つきが悪くてすいません」

 進藤くんは少し首を傾げて口角を上げた。どういう意味だよ。
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