日直当番【完結】
 おしゃれなティーカップに注がれた紅茶の湯気の向こう側に進藤くんが見える。新藤君はコトリと小さな音を立てて自分のティーカップをテーブルに置いた。

座るときに足を組むのは進藤くんの癖らしい。そう言えば進藤くんの私服は初めて見た。ロングティーシャツとジーンズという至って普通の格好だけど、いつも制服か学校指定ジャージしか見たことがないので新鮮だ。たぶん部屋着なんだろうな。


 ……沈黙。


「ねぇ、なんか喋ってよ」

「僕の苦手なことは話題提示です」

「あっそ」

 私は紅茶を一口ふくんだ。進藤くんは、沈黙を遮るようにテレビをつけた。私たちは特に話をするわけでもなく、黙って夕方のニュースを見ながら紅茶を飲んだ。

「さて、時間も時間ですし、家まで送りましょう」

 窓の外を見ると薄暗くなり始めていた。雨足は少し弱まったようだ。ティーカップに残った冷めた紅茶を一気に飲み干した。
< 40 / 120 >

この作品をシェア

pagetop