日直当番【完結】
 外に出てまわりを見渡すと見たことがある風景だった。進藤くんは住んでいるのは私の家よりも駅に近いところらしい。

「傘どうぞ」

「どうも。あの、進藤くん、あとはひとりで大丈夫だよ。ここからそんなに遠くないから」

「こんな暗い中、女性ひとりでは危険です。最近この辺りでも痴漢が増えてるらしいですし。それに神崎さんの体調もまだすぐれないでしょう?」

「なんか今日の進藤くんヘンだよ」

「変とはなんですか。僕は至って普通です。行きましょう」

 雨はしとしと降り続けている。時折、「人は右側通行です」とか「傘を差しながら並んで歩くのは危険です」とか、いちいち小うるさい進藤くんはやっぱり至って普通のようだ。

「……ねぇやっぱり隣に来てよ。後ろ歩かれるとつけられてるみたいで気持ち悪い。それに車の通りも少ないからそんなに危なくないって」

「……しょうがないですね」

 進藤くんは私の左隣にぴたりと寄り添うように歩き始めた。

「あ、カバン持ちましょう」

 進藤くんは右手を出して催促する。

「重いからいいよ」

「それなら尚更。手ぶらでついていくのもなんですから。僕に持たせてください」

「持つんだったらもっと早く言ってよね。はい」

 私は進藤くんにスクールバッグを手渡した。

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