日直当番【完結】

皆川の恋

 なんでもないある日の昼休み、私は由理と教室のベランダで野球部のグラウンド整備を見ながらだべっていた。

「ねぇ知ってる?野球部の長谷川先輩とマネージャーの高橋先輩って付き合ってんだってさ」

「うそ!マジで!?美男美女カップルじゃん」

「長谷川先輩、エースでピッチャーだし背高いしかっこいいし明るいし。いいよねぇ…」

「えーいいか?私はあの人どこか気取っててあんまり好きじゃない。え、てか由理、長谷川先輩のこと好きだったの?」

「違うよ。総合的にバランス取れてていいよねって話。いいなぁ彼氏」

「ていうかその前に恋がしたい」

不意に私たちの間に誰かが割って入った。

「おめぇーら、何たそがれてんだよ」

皆川だった。私と由理の間で両肘をふたりの肩に置き、妙に気取った言い方で私たちの顔を見比べた。

「ウザい皆川。あっち行け」

「えっひどっ。なんだよのけものにすんなよ。なんの話してんの?」

「恋がしたいなぁって」

「恋の相手ならここにいんじゃん」

「えーどこどこ。どこにいんの?」

由理はわざとらしくあたりをキョロキョロと見渡した。

「岩戸まで!ひどっ」

「あはははは。ていうか皆川くんて彼女いないの?」

「いねーよ。俺今フリーだから。なんなら今日放課後デートしてやってもいいぜ」

 皆川は由理にウィンクをかました。

「ばーか、由理があんたみたいなチャラ男なんか相手にするか」

私は皆川の肩を叩いた。

「いって。冗談に決まってんだろ。俺はバスケだけが恋人だから」

「あ、そろそろ5時間目始まっちゃう。次視聴覚室だよ。行こっか由理」

「えー俺はー?」
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