ゆるふわな君の好きなひと

 夕方六時前。まだ日が落ちていない初夏の空をぼんやり見上げて時間を潰していると、「つーちゃん」と呼ばれた。

 声のしたほうに顔を向けると、璃美と目が合う。その隣には眞部くんがいて、ふたりは同時にわたしに手を振ってきた。

 ふたりのそばに、由利くんはいない。

 同じ方向へ帰る由利くんたち三人は、登下校のときはだいたい眞部くんを真ん中に挟んで歩いている。

 部長の眞部くんが出てきたってことはバスケ部の活動は終わってるはずなのに。

 由利くんはどうしたんだろう……。


「つーちゃん、今日は俺の代わりに圭佑に付き合ってもらってごめんね」

 ふたりに遅れて由利くんの姿がないか探していると、近づいてきた眞部くんに話しかけられた。


「うん、それは全然。今日は時間もあったし」

「助かる。圭佑、なぜかつーちゃんの言うことだったらちゃんと聞くから」

「そんなことないと思うけど……」

 笑って首を横に振ると、眞部くんが笑い返してくる。

 眞部くんの目には、由利くんがわたしの言うことを聞いているように見えてるんだ……。

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