ゆるふわな君の好きなひと

「由利くん、人の顔も名前もろくに覚えようとしないのに、つーちゃんにだけは初めから懐いてるもんね」

 璃美まで笑ってそう言うから、ふたりの言葉を間に受けて頬が火照る。

 数十分前に教室で告白されたばかりなのもあって、眞部くんと璃美の言葉が妙に恥ずかしい。

 照れ隠しにうつむくと、璃美がわたしの腕に両腕を絡めてきた。


「つーちゃん、今から帰るんでしょ。駅前でアイス奢るよ。晴太が!」

「え、俺が? 璃美ちゃんがアイス食べたいだけじゃん」

「だって、由利くんがつーちゃんにお世話になったんでしょ。晴太、由利くんの保護者じゃん」

 苦笑いを浮かべている眞部くんを振り向きながら、璃美がわたしの腕を校門の外へと引っ張る。

 そのまま連れて行かれてしまいそうだったから、わたしはぐっと地面に足を踏ん張った。


「璃美、ちょっと待って。由利くんは?」

「由利くん?」

 少し早口で訊ねたら、璃美がなんだか気まずそうな顔をした。

 璃美は、由利くんがわたしに校門で待つように言ったことを知らないのかな。

 璃美の微妙な反応に首を傾げたとき、眞部くんが「あー、圭佑ね」と横から口をはさんできた。

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