ゆるふわな君の好きなひと
「由利くんがオッケーするとか絶対にないよ。どうせ、顔も名前も知らない子でしょ。先に帰れって言ったのだって、ただの気まぐれだって」
璃美が軽く眉根を寄せて、眞部くんの言葉を否定する。
事情も知らないのに、璃美がなんとなくわたしの気持ちを察してくれているのがわかる。
璃美の優しさは伝わってきたけど、わたしはだんだんと不安になってきた。
由利くんが来たら、告白の返事をしようと思っていた。
教室で言ってくれた「付き合う?」という問いかけに、今度はちゃんと「いいよ」って頷こうと思ってた。
だけど、由利くんが今話しているのは別の女の子、なんだよね……?
その女の子と話すために眞部くんと璃美を先に帰らせて、わたしは校門で待たされている。
由利くんの本気を信じようと決めた気持ちが、わたしの中で少しずつ揺らぎ始めていた。
「つーちゃん、行こう。アイス、何味にする?」
固まって動かずにいるわたしに、璃美が明るく話しかけてくる。
だけど、璃美の声はただの音としてすり抜けていくばかりだ。