ゆるふわな君の好きなひと
「なんか、ちょっと用事あるらしい」
「用事?」
「うん。部活の片付けが終わったあと、今日は先に帰っといてって言われたから、置いてきた。そういえば俺たちと別れたあと、体育館出たところで一年の女子に引き留められてたな。用事ってもしかして、それかな?」
「え……?」
わたしに校門で待ってるように言ったのに、他の女の子にも呼び出されたってこと……?
眞部くんの話を聞いて、寒くもないのにヒヤッと背筋が冷たくなった。
わたしがあからさまに顔色を変えたから、璃美は何かを察したみたいだった。
「告白かなって感じだったけど、約束してたんじゃなくて、部活帰りの由利くんを待ち伏せて突撃してきたって感じだったよ。由利くんのことだからどうせ適当に断って終わりだと思うし、気にすることないって。駅前でアイス食べてたら、すぐに晴太に連絡来るんじゃないかな」
璃美が、不自然にも思えるくらい明るい声でハハッと空笑いする。
だけど、何も言わなくてもわたしの微妙な気持ちの変化を察してくれたのは璃美だけだった。
「でもさ、ああいうシチュエーションで圭佑が俺たちのこと先に帰らすって珍しくない? 今までにも圭佑が帰り際に女子に呼び止められるってことはよくあったけど、だいたいその場で適当にあしらうか、その女子が諦めるまで俺たちのことまで一緒にすげー待たせるじゃん。待ってた子、たぶん一年だよな。可愛い感じの子だったし、オッケーするつもりなんかな」
眞部くんがこの場にいない由利くんのことをからかうように、ククッと笑う。
眞部くんは冗談のつもりだろうけど、わたし的にはあまり聞きたい話ではなかった。