幼なじみが愛をささやくようになるまで〜横取りなんてさせてたまるか〜

ここから

「陽ちゃん、今日は何を奢ってくれるの?」

社会人になった私を陽ちゃんも楓ちゃんも
気がつくと食事に誘ってくれるようになった。いつも私が疲れていそうなタイミングを見ては誘ってくれる。
職場も別、それに実家暮らしの私とは違い、2人はそれぞれ一人暮らしをしているから約束しない限り会うことはできなくなったけれど同じ東京駅を使っているのでそういう意味ではまだ会いやすいのかもしれない。

陽ちゃんはアパレル関係で働いており、いつもおしゃれな格好をしている。私の洋服を見立ててくれたり、社割で買ってくれたりもする。私が選ばないような色や形の服を買ってくるが意外にも似合うため陽ちゃんのセンスの良さに脱帽だ。

「ひまり、今日は久しぶりに楓太も来るって。稼いでるらしいし寿司でも奢ってもらおうぜ」

「楓ちゃん? 凄いよね。まさか楓ちゃんが弁護士さんだなんてさ。しっかりしてるって思ってたけど」

「俺は? 俺だってしっかりしてるだろ?」

陽ちゃんは私に詰め寄ってくる。
そんな陽ちゃんはやっぱり楓ちゃんとはちょっと違うかな。
陽ちゃんは親しみやすさが前面に出ていていいお兄ちゃんって感じ。
それに比べて楓ちゃんは私にすぐ注意してくる厳しいお兄ちゃん。スカートの長さや持ち物など校則違反をすぐに指摘してくる姿は陽ちゃんと全く正反対。

「陽ちゃんはしっかりしてる…かな。いいお兄ちゃんって感じだよ」

「いいお兄ちゃんかぁ。ひまりは可愛いこと言ってくれるよ。生まれた時からいつも可愛いもんな」

「そんなこと言ってくれるのは陽ちゃんと楓ちゃんだけだよ。私は誰とも付き合ったこともないし、モテないもん」

私はプーっと頬を膨らませた。

陽ちゃんも楓ちゃんも近所では有名な双子だった。
2人してスポーツマン、さらには勉強も学年トップクラス。それにもかかわらず2人ともユーモアがあり人気者。
陽ちゃんのパッチリ二重と楓ちゃんのスッとした一重が違うだけでとても整った顔は周囲からの視線を集めていた。背はぐんぐんと伸び、あっという間に180をこえてしまい、何もかも2人は注目を集める存在になってしまった。

そんな陽ちゃんはいつでも隣に可愛い女の子がいるようになった。華やかな格好をした、いい香りのする子がそばにいて、私が陽ちゃんと話すたびに睨まれるのが常だった。だから私は陽ちゃんから離れようとするが、陽ちゃんはそれを許さない。妹のような私を邪険にする女はダメだとそこで付き合いをやめてしまう。でもそんなことをされるとますます女の子たちからの風当たりは強くなり、私は中学まで孤立しがちだった。
それを見かねて楓ちゃんは私のことを庇ってくれるが、楓ちゃんだって人気者。もちろんそこでも一悶着がある。
楓ちゃんは陽ちゃんほどではないが大抵女の子が近くにいた。その子たちからもそばにいる私は疎ましいのか子供心にそばにいたらいけないと思い、誰もいない時にしか二人のそばにはいかないようになっていった。
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