無理、俺にして
「ごめんって」
「……」
「そんなに怒ると思わないじゃん……ごめんて」
誰もいない屋上に、寂しそうな彼の声だけが呟かれる。
私は今日も手作りのお弁当をぱくぱくと口に運び、視線はずっと下に向けていた。
昼休みが始まってから10分くらい経つけど、まだ一度も目を合わせていない。
「ねえごめんって、ゆめちゃん機嫌直して」
彼……あっくんはそう言って自分の両手を顔の前で合わせた。
もうそろそろかわいそうになってきたかも……。
「あっくん、私との約束忘れたわけじゃないよね?」
「うん……ゆめちゃんとは知らない人の振りする……って約束……」
「そう!」
私は箸を置いて、やっとあっくんの目を見た。
思いの外悲しそうな顔をしていて、なんだかこっちが悪いことをしている気分になったけど、でも悪いのはあっくんだ。
「あっくんが高校で目立つ存在になるのは最初からわかってたんだから、それに巻き込まれたくないの。私は静かに高校生活を送りたいの!!」
あっくんとは、幼稚園の頃からの幼なじみだったりする。
「1年生の時は違うクラスだったから穏やかだったのに……どうしてよりによって今年はあっくんと同じクラスなの……」
「ゆめちゃん、地味に傷つくよ俺……」
そんなこと言ったって。
「あっくんが嫌いな訳じゃないけど、私はできるだけ静かにひっそり1人でいたいんだよ」
「ゆめちゃんいつも1人だから、少しくらい話しても大丈夫じゃないかなって思ったんだけど」