幼なじみの一途な狂愛
「乙哉、たまには合コン来てよ!お前がいると、全然違うんだよ!」

バーを経営している・光昭の店で飲んでいた、乙哉。
スグル同様、大学の時からの友人だ。
あと、同じく同期の悟史(さとし)貴生(たかお)がいる。

「興味ない」
「なんで!?」
「言いたくない」

「心に決めてる女でもいんじゃね?」
スグルが、ぼそっと言った。

「そうなの?乙哉」
「だから!言いたくねぇの!」

「失敗したって女だろ?」
「あ?」
「だって昔、言ってたじゃん!
もう二度と放さないって」
「そうだよ」
「俺がその女、探してやろうか?」

「そうだよ!スグルは顔広いから、頼んだら?乙哉」

「いい」

「なんで?」

「もし……幸せに暮らしてたら、俺が邪魔になるだろ?」
「邪魔って……」
「それに━━━━━」
「ん?」
「もし男がいたら……俺はきっと………」

「なんだよ……!?」

「ううん!何もない……!」
乙哉は、煙草を吸い始めた。

「じゃあ、再会できたら?」
「は?」

「その女に、偶然再会したら?」
スグルが、乙哉を見据えていた。

「そんなの、決まってる」

もし、再会できたら━━━━━━

もう絶対、放さない。
例え……恋人になれなくても、どんな形でも傍にいる。

俺は、梨々に……

人生を捧げる━━━━━━━


そしてそれから数ヶ月後の、運命とも言えるあの日。

「━━━━━乙哉?」

狂喜で身体が震えた。
嬉しいなんて、レベルじゃない。

乙哉は、言葉通り“狂う程に”喜びが込み上げたのだ。

梨々…梨々…梨々…梨々…梨々…梨々……

梨々がここにいる。

もう二度と、放さない………!!!!


スグルが何かを察したのだろう。
梨々香に聞く。

「梨々香ちゃんって、彼氏いんの?」

スグルが質問して、梨々香が答える。
その二・三秒……
乙哉にとっては、数時間待たされているような感覚だった。

「え?あ…彼氏……ってゆうか、好きな人がいる…かな…?」

あ……梨々は、辛い恋をしている。

乙哉は直感的にそう思った。

だったら……場合によっては、俺にだって“まだ”チャンスはある。

このチャンスを、逃さない。

頑なに、乙哉を避けようとする梨々香。
益々、放せるわけがなかった。

辛いことから、俺が必ず救い出す━━━━━━

そんな思いで梨々香の手を握る。


「不倫、してるの!!
最低な、女なの!!
ほら、最低でしょ?
関わらない方がいいでしょ?」

あぁ、そうか………
なぜかわからないが、妙に納得できた。

だからあんなに、悲しそうな表情(かお)をしてたんだ。
だからあんなに、俺を避けようとしてたんだ。と━━━━


「だから━━━━━━━」
梨々香を抱き締めた乙哉。

俺のせいだ━━━━━━━

あの時……高校を卒業したあの時。
俺が手を放したせいで、梨々香を苦しめてしまった。
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