幼なじみの一途な狂愛
通話を終え、乙哉がカフェに向かうと梨々香がナンパされていた。
カウンター席に座る梨々香の両脇から、二人の男がしつこく話しかけている。

頭が熱くなり、身体が震えだす。

「ねぇ!いいじゃーん!」
「付き合ってよー」

「ほんと、無理です……」
「一人で寂しそうじゃん!」

「今は寂しくない。乙哉がもう放さないって言ってくれたから」

「は?」
「あ…////いや、と、とにかく、寂しくないんで」

「何、赤くなってんのー(笑)?」
「可愛い~!」
立ち上がった梨々香の顔を覗き込む、男達。
そして一人の男が、梨々香の手を掴んだ。

「ちょっ…ちょっと!離し━━━━━━」


「俺の大事な“彼女”に何の用?」
梨々香を後ろから抱き締め、二人の男を見据え睨みつけた乙哉。

「━━━━━!!!?」
「す、すみません…!!!」

凄まじい乙哉の怒り。
梨々香さえも、背に重みを感じる程の恐ろしさを感じていた。

男達は、そそくさと去っていった。

「梨々?大丈夫?」
後ろから覗き込んできた乙哉は、たった今の恐ろしさとは全くの正反対の優しく、穏やかだ。
甘ささえ感じる程だ。

思わず梨々香は振り返り、乙哉に抱きついた。

「梨々?
ごめんな。怖い思いさせちゃって……
一人にしないって言ったのに、ごめん!!」
ゆっくり乙哉の大きな手が、上下に動く。

「ううん…」

違う。
ナンパされて怖かったが、背に感じた乙哉の雰囲気の方が、はるかに怖かったのだ。

昔の乙哉と何かが違う。

でもこの時はまだ、極々小さな違和感程度だった。


「梨々。
明日も仕事休みだろ?」
「うん」

「じゃあ、今日も俺ん家に泊ってけよ!」

「え?」
「できる限り、梨々と離れたくない」
「で、でもなんか…おかしくない?」
「何が?」
「いや…だから。
付き合ってないのに、今日もまた泊まるなんて……」

「そ?」
「うん。
しかも……乙哉はさ」
「うん」
「私の事……その……」

「大好きだよ!」

「でしょ?なのに、その私がひとつ屋根の下にいたら………」

「梨々を傷つけることはしないよ。
とにかく、梨々の傍にいたいんだ」

「乙哉…」
「だから、今日も傍にいて?」

梨々香の顔を覗き込んで言った、乙哉。

梨々香は顔を赤くし、小さく頷いた。




そして二人は次の日も、デートをして………
「乙哉、さすがに今日は帰るね!
明日からまた、仕事だし…」
「………うん」

あからさまに乙哉が、寂しそうにして肩を落としている。
「なんか…乙哉……」
「ん?」
「か、可愛い……」
「そう?」
「学生の女の子みたい…!可愛い…」

「ねぇ、梨々」
「ん?」


「“平日は”泊まれなんてワガママ言わないから、仕事終わりに毎日会お?」
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