幼なじみの一途な狂愛
「梨々、コーヒー飲む?」
「うん。
……って、私が淹れる!」

慌てて乙哉を追いかける、梨々香。

「いいって!!
梨々は、座ってな!疲れただろ?」
頭をポンポンと撫で、微笑む乙哉。

「でも、私もここに住むんだし……」

「いいから!!
座ってろ!!
言うこと聞かないと、キスする!!」
「はい?」

「梨々の口唇、柔らかそう……!」
口唇をなぞる、乙哉。

「ちょっ…やめ……!」

「だろ?
ほら、ソファ!行ってて?」
「う、うん…」

ソファで座っている梨々香を、アイランドキッチンから見ながら乙哉は幸せを噛み締めていた。

(これからは仕事以外、ずーっと梨々と一緒にいれる。
幸せ~!!あとは、好きになってもらえれば完璧!!)
と、心底嬉そうにコーヒーを淹れていた。


「はい!梨々」
「あ、ありがとう!
…………ふぅー、美味しい!」

受け取り、一息つく梨々香。
そんな梨々香の頭をいつものように撫でる、乙哉。

とても穏やかな時間が流れる。

「高校生の頃…」
「ん?」
梨々香が、ぽつりと話し出す。

「こんな風に、一緒に住むなんて思いもしなかったなぁ」
「そうだな…」
「楽しかったなぁー、あの頃…」
「うん…」

「いつも一緒にいて、乙哉はいつも守ってくれてた」

「梨々?」
「当たり前に守られてたから、私……一人じゃ何も出来なくなってた。大学一年の頃は、大変だったんだから!」
「そっか…ごめんね……」
「ほんとだよ!!
乙哉のせいで!!私は何も━━━━━」

「梨々?泣くなよ……」

「あれ?なんで……涙なんか………」

乙哉の大きな手が、目元に触れる。
下まぶたをなぞるように、指が動いた。

「ごめんね。
もっと早く、梨々への気持ちに気づいてたら……
高校卒業しても、絶対…!梨々の手を離さなかった」


乙哉の手は、何故こんなに………気持ちいいのだろう。
大きくて、力強そうなのに、とても優しく動く。
頭を撫でる手も、涙を拭う指も……

撫でられてるだけなのに、乙哉の愛情が伝わってくるようだった。



その日の夜。
なかなか眠れない。

キッチンへ向かい、冷蔵庫からペットボトルを取り出した。
「あ……今日、満月だっけ?」
リビングダイニングの大きな窓から、月が見えた。

「いや、少し欠けてる?」

でも綺麗だなぁ………と思い、バルコニーに出た。
しばらく月を見上げていると、何故か泣けてきた。


“梨々香は、いつも誰を見てるの?”


元彼に言われた言葉だ。
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