幼なじみの一途な狂愛
「ところでさ」
「うん」

「不倫相手って、どんな奴?」
「え?」

その日は、乙哉のマンションに泊まることにした梨々香。
二人でビールを飲みながら、不意に乙哉が言った。

「課長」
「梨々の勤めてる会社の?」
「うん」
「ふーん」
「なんで?」
「いや、別に!なんとなく、気になっただけ」

「月曜からが、ちょっと億劫だなー」
「ん?」
「課長と職場では会わなきゃでしょ?
なんか、気まずいなって……」
「あー」
「まぁ、自業自得だけど!」

「………」
「乙哉?」
「………あ、ん?何?」

「それ、こっちのセリフ!どうしたの?考え込んで」

「ううん。どんな最低な顔してんのかなーって(笑)」
「気になる?」
「まぁ、そりゃあな……
梨々のこと、弄んだわけだし」

「でも、私も課長のこと、利用してたみたいなもんだよ?」

「どうゆう意味?」

「乙哉に再会して気づいたの。
私、課長のこと…好きだったっていうより、寂しさを埋めてもらってたんだなって!」

「寂しさ?」

「大学生になって、いつも当たり前にいてくれた乙哉がいなくて、寂しかった。
とにかく一人が嫌で、誰かにすがりたかったんだと思う。
課長はよく言ってくれてた。
“梨々香を一人にしない”って。
だから、その言葉に甘えてたんだなって。
乙哉に再会して本当に嬉しくて、また乙哉と一緒にいれるって思ったら、なんかフッ…て肩の力が抜けたってゆうか、安心できるようになったの。
だから私はきっと……乙哉の代わりを求めてたんだなって」

「梨々も、俺のこと想ってくれてたんだ!」

「うん……
まぁ、でも、どっちにしても最低なのは変わらないけどね!奥さんの気持ち考えたら、どんなに酷いことしてたんだろって……」

「一番最低なのは、その課長だよ」

「そう?私だよ?」

「ううん。最低なのは、課長だよ。
俺にはわからない。
好きな女と一生一緒にいれるのに、他の女とこそこそ会うなんて……
しかも口先だけの“一人にしない”なんて……
………………俺は、梨々以外の女なんて見るだけで吐き気がするのに」
再会した日に見た、恐ろしく黒い雰囲気の乙哉。

「乙哉!」
「………っあ!ごめん!」
「なんか、怖いよ…」
「ごめんな。ごめん!
……………もう、風呂入って寝る?」

「うん、そうだね」

先に風呂に入った、梨々香。
「お先にいただきました!」

「………っ////梨々、可愛すぎ////」
乙哉のスウェット姿の梨々香。
ブカブカのスウェット姿が、乙哉の理性を煽る。

「乙哉?」
「…………梨々、俺のベッドで寝ろよ。
俺はソファで寝るから」
乙哉は頭を振って、理性を保つ。

「は?ダメだよ!!」
「は?ダメなわけないだろ!
梨々をソファでなんか寝かせるわけねぇじゃん!」
「ソファでいいよ!」
「ダメ!!」
「私が、ソファ!!」
「ダメだ!!」
「ダメじゃない!!」

「あんま言うと、キスするよ!!」
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