幼なじみの一途な狂愛
「は?き、キス!!?」
目を真ん丸にする、梨々香。

「うん。
どうする?」

乙哉が梨々香の頬に触れる。
そして、口唇をなぞってきた。

「べ、ベッドで寝かせていただきます……」

「ん。いい子!湯冷めするから、もう寝ろよ。
明日、デートしよ?
おやすみ!」
頭をポンポンと撫で、乙哉はバスルームへ向かった。


梨々香は、しばらく動けなかった。
心臓がバクバクして、身体が震えて高鳴りを押さえられなかったから。

「乙哉って、あんな顔するんだ……」
梨々香を見つめる、熱い瞳。
色っぽい顔。

それは、ベッドに入っても変わらなかった。

「乙哉の匂いがするし……
……って、当たり前か…!」
煙草の匂いと、乙哉自身の匂い。

「なんか、安心する……」
梨々香はゆっくり、眠りについた。


「スグル?
ちょっと、調べてほしくてさ!
━━━━うん、そうだよ!梨々の不倫相手の……
うーん……だって、嫌じゃん!
“俺の”梨々を傷つける存在なんて、いらねぇし」
風呂をあがり、リビングのソファで煙草を咥えた乙哉が、秘書のスグルに電話をかけていた。

通話を切り、煙草の煙を吐いた。
先程の梨々香の姿が、浮かんだ。

「ほんっと、反則だろ…/////!!?」

梨々香の顔が見たくて、ベッドルームに向かう。
自分の部屋なのに、ドアを開ける手が震えていた。

ゆっくり開けると、梨々香はぐっすり眠っていた。

ベッド脇に腰かけた。
頬に触れ、撫でた。
柔らかくて、すべすべする。

“梨々がここにいる”
この事実は、乙哉にとってこれ程ない幸福だ。

「綺麗だ……」
寝顔があまりにも綺麗で、愛しさが込み上げてくる。




梨々香同様乙哉も、大学生になって梨々香がどれ程大切な存在かを思い知らされていた。

大学一・二年の頃は、とにかく単位を稼ぐことだけ考えていたから、ある意味…梨々香がいない日常が安定していた。

でも次第に、心の中にぽっかり穴があいたように、毎日に活気がなくなっていく。

そして、気づいた。

梨々香を女として好きだったんだ━━━━━と。


“梨々に会いたい”
いつの間にか、その気持ちだけに支配されるようになっていた。

梨々香を探すことはできた。
でも、もし梨々香に既に恋人がいたりしたら、俺は生きていけるだろうか。

嫉妬し、相手の男を傷つけるかもしれない。

ずっと、ある意味…宝物のように大切に守ってきた梨々香を、傷つけることになるのだけは避けたい。

彼女をつくってみた。
とっかえひっかえ、何人も……
とにかく、他に意識をそらそうとした。

でも、梨々香の顔ばかり浮かんで逆効果に終わる。

梨々とのキスは、どんな感じなのかな?
キスの後、どんな表情(かお)をするんだろう。
梨々の身体は、どんな風なのかな?
梨々は、どんな甘い声を聞かせてくれるんだろう。

梨々だったら………
梨々…梨々…梨々……


想いは………日に日に募っていった━━━━━━━

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