慶ちゃんが抱いてくれない!
風呂から出ると、先程部屋に行った桃菜がリビングのソファに座っていた。
俺は桃菜の隣りにソファに腰を掛けた。
「桃菜、お葬式の時なかなか側にいてやれなくてごめんな」
「…んーん。パパ忙しかったから平気……美緒ちゃんと楓おばちゃんがずっと一緒にいてくれたもん……パパもう寝るー?」
桃菜はそう言って俺の顔を見た。
「あぁ、そうだな…今日は桃菜が寝たらパパも寝ようかな……お部屋一緒に行こうか。桃菜寝るまでパパ一緒にいるからさ」
そうか、一人で眠れなかったんだな。
「……今日パパと一緒に寝たいなぁ」
「お!そうだな!今日は一緒に寝ようか」
桃菜がやっと甘えてくれて、かなり嬉しかった。
桃菜を抱っこして寝室に連れて行っていつも真穂が寝ているところへ寝かせて、俺も横に寝転んで布団を掛けてやる。
真穂と似たまつ毛の長い大きな目で俺の顔を見る桃菜が、可愛くて頭を撫でてやった。
「パパぁ」
「ん?」
「……桃菜ねぇ、大きくなったらパパみたいな人と結婚したいなぁ」
「パパみたいな人か…」
俺はかなり愛情表現下手くそだったし、好きだと言ってくれる真穂の事を何度も振りまくったり……かなり真穂の事を困らせてきたから俺みたいな男は全くオススメはしないけど……
しかし、娘にそんな事を言ってもらえるとかなり嬉しかった。
「……まぁ…そうだな。桃菜の事大事にしてくれる人だったら良いな」
「うんっ…桃の事大事にしてくれるって言ってたぁ」
「……ん?ちょっと待て?もう相手いるの!?まさか付き合ってるのか!?」
今時の子は付き合うの早いって聞いた事がある……いや、それにしたって!
「へへへ~」
そういえば葬式に美緒のクラスメートも来てたけど…あの中の男子の中の……?
く……本当年月が過ぎるのはそういう意味でも早過ぎる…いつかは桃菜にも男が出来るのは分かっていたけど…
お義父さんも、俺に対してこういう気持ちだったんだろうな……今になって気持ちがわかった…。
「パパ……おやすみなさい」
「おやすみ……」
桃菜はすぐに寝息を立てて眠ってしまった。
俺も目を閉じる。
真穂がいなくなった今でも17歳の時に俺達が決めた決断が正しかったかはわからない。
最後に幸せだったと言ってもらえて…
真穂の事を最後まで幸せにする事が出来て…
後悔はしていない。
俺は魔女に恋して…全力で真穂の事を愛せて…愛してもらえて幸せだった。