唯くん、大丈夫?
りょっくんから私の教科書を取り上げた唯くんが、自分の席に向かう。



「…」



私はりょっくんと顔を見合わせる。



「どーぞ。」



戻ってきた唯くんが自分の教科書をりょっくんの手に置いた。



「今度から俺が貸してあげるね。りょっくん。」



唯くんは、無表情だ。



「お…おう…ありがとう…」



りょっくんは顔を引き攣らせて早足で去っていった。




「唯くん!」

私はたまらず立ち上がって唯くんを呼んだ。


「なに?」


その優しい『なに?』にキュンして顔が緩みそうになるのを必死でこらえる。



「ちょっと、やりすぎでは?」


「なにが」



…う。

ちょっと怖い。



「…りょっくんも高田君も、みんな前からお友達なんだよ?急に話せなくなるのは、なんか……。唯くんだって、急に委員長とか美琴と話せなくなったら寂しくない?」



「…」



唯くんは、無表情だ。



「…」



唯くんは、無表情だ。



「…」



無意識に息を止めていた私は、そろそろキツい。



「……わかった。」



納得してくれた。




「ッぷはー!…ゼェ、ゼェ、」


「なんで苦しそうなの?」


「唯くんの無言、心臓に悪い!」


唯くんは「は?」と言ってから何でもない顔でまた私のお弁当を食べ始めた。



とにかく理解してくれてよかった。

これからは気兼ねなく他の男の子の友達とも話せそうだ!

はー、よかったよかった!



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