唯くん、大丈夫?

198/250。

「唯くん!帰ろー!」


「ん」


新しいクラスでの初日が終わった。


唯くんがスクールバッグに教科書を入れ終えて立ち上がり、ニヤニヤする私の視線に気がつく。




「…フフ」


「なに」


「同じクラス、嬉しい!」


「…うん」


唯くんはスタスタと教室の外に向かって歩いていってしまう。

唯くんの無表情が、ちょっと嬉しそうに見えるのは気のせいかなぁ。


「フフ!ゆーい君っ!」


腕に抱きついてよいしょ、とはがされる。


ほんと、生きててよかったなぁ!







「おー羽根村ー」


廊下で前から来た男の子2人組が手をあげて挨拶してくれる。


「やっほー木島君、辺見君ー!」


2人はこの前まで同じクラスだったサッカー部の男の子達。


「なぁこいつ春休みに彼女できたんだってよ!今度初デートだって!」


「おい木島!いちいち言いふらすなよ!」


「えーおめでとうー!」


「辺見、超緊張してんだぜ。なんかアドバイスしてやってよ」


「初デートいいねぇ〜!アドバイスかぁ、うーん…」




ふと、視線。




振り向くと唯くんと目があった。




すると、唯くんがハッとして両手で顔を覆う。





「…唯くん?なにしてる?」




唯くんがくぐもった声で言う。



「…見ないようにしてる」





「…」







……っ!(悶)







「見て。これが正解。大正解だよ…!!」


「だめだ、羽根村は役にたたねぇ。行こう。」
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