唯くん、大丈夫?

フェアウェイウッド。

「唯くんて基本器用なのに字だけはへたっぴだよねぇ」




なかなか失礼な私の言葉に、

唯くんは手を止めて一瞥した。




「…読めればいいだろ」




そう言ってまた原稿用紙に目を落とし、いびつな文字を並べていく。




放課後、日が落ちてもう誰もいない教室。



遅くなるから先に帰れと言われたけど一緒に帰る!と駄々をこねた私は今、原稿用紙と格闘する唯くんを眺めている。




書くたびに小さく揺れるサラサラな前髪

その隙間から見える長ーいまつ毛

バランスの良すぎる端正な唇




ほんとにかっこいいなぁ。ずっと見てられるなぁ。


この崩れまくりの字すら愛おしい。



ふと気になった文章を読み上げてみる。



「…少しあいていたカーテンの隙間からのぞくと、羽根村さんと変質者がいるのが見えたので、とっさにそこにあったゴルフ部の、ゴルフクラブのフェ…フェアウェイウッドの7番で窓ガラスをたたき割ってしまい……フェアウェイウッド??」


「本当はドライバーだったけど、フェアウェイウッドの方が文字数稼げる」



唯くんは無表情ながら得意げだ。

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