唯くん、大丈夫?
そして、唯くんが私の前にゆっくりと膝をついた。






「…」






怒ってるような、悲しいような顔で私を見てる。






「…ごめん…なさい…」





唯くんの心配を無駄にしてしまったことを

私は蚊の鳴くような声で謝った。






「…」






唯くんはため息をついて、私の背中に腕をまわした。







ぎゅう、と私を抱きしめるその腕が

…震えてる。







「…怪我は?触られてない…?」






「だい、大丈夫…何もされてない」





私の返事に安堵したらしい唯くんが、ハァー…と息をついて腕に力をこめる。





「……バカ」

 



唯くんが私の肩に顔をうずめながら消え入りそうな掠れ声で言った。





…本当だ

私バカだ



わかってたのに

唯くんがたくさんたくさん私を大事に想ってくれてること



唯くんがこんなになるまで心配させちゃうなんて

ほんとにバカだ






「ごめん…唯くん、ごめんね」






私はその大きくて小さな背中に手をまわし

かっこよすぎるヒーローの小さな震えがおさまるまで

大丈夫だよ

ちゃんとここにいるよって伝わるように

強く強く

抱きしめていた





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