唯くん、大丈夫?

消えたSOS。

「………なんで?」



そう呟く私に、唯くんがため息をついて試着室のカーテンをつかむ。



「もういい?」

「待って。いま原因を分析してるから。傾向と対策を練らないと。」





私と唯くんは今、古着屋にきている。


昨日で全ての試験を終えた私たちは、来週のデズニーデートに向けておそろいのスニーカーを買おうと大型ショッピングモールにやってきた。

思いのほかはやく良いスニーカーが見つかって、暇つぶしに近くの古着屋に足を踏み入れてみてから早一時間。




「…おかしい」



私は試着室の中で下水溝みたいな色のニット、おじいちゃんしか着こなせないような変な丈の黄土色のスラックスを履き、気だるげに立つ唯くんを観察する。



「…なんで?なんでオシャレになっちゃうの?」



都会のど真ん中のオシャレな道をコーヒー片手に歩いてそうだ。




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