唯くん、大丈夫?
「え?あれ?えっと…あれ…?」



頭を抱えて状況を整理しようと試みるもどんどんこんがらがっていく私を、唯くんが黙って見つめている。



ひぃ…なんてかっこいいんでしょう…



…いや、ちがう、ちょっと待った。






「…唯くん、今どこに住んでるの…?」

「実家」

「実家…」


実家ってことは、元々飲んでた春寝駅の3駅隣…




『次は東万住。東万住です…』




そしてもうすぐ着く、わたしの家がある東万住駅は春寝駅から乗り換え一回あって、全部で1時間半かかる。



「…もしかして唯くん、私をここまで連れてきてくれたの…?」


「…」



唯くんの返事を待たずに、電車が大きく息を吐きながらドアを開けた。


『東万住、東万住です。お降りの方は…』





唯くんが立ち上がって私の手を引いた。





「…!」





そのままホームに降りると手を離し、上りエスカレーターを目指してずんずん歩いていく。






「えっ、唯くん、えっと…?」


「家どっち?」


「え?」


「西口?東口?」


「あ…西口…」


「ん」




言うなり唯くんは無表情でスタスタと歩いていく。





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