唯くん、大丈夫?
私はなるべく小さい声で唯くんに問いかける。


「唯くん、え、な、急に、どした?急にどうした?」


「なにが」


唯くんは動揺する私を平然と見下ろしている。



…怖い。

もはや怖い。

この状況でこの無表情でいられる唯くんもそうだけど、

頭のてっぺんからつま先までかっこよすぎる私服の唯くんが、怖い。

多分、もう何秒かこのままいたら私、召される。天に。



…というか、少し離れたところにいるお客さんたちからの視線がすごい。

バッチバチに浴びている。

槍のように全身に刺さっている。

なんならバチくそに盗撮されている。

それはそうですよね、そこのポスターの中のどえらいイケメンがここに立って、平々凡々女の手を握ってるんですもんね。



「ゆ、唯くん、とりあえずこの、お、おててを外し…」


「やだ」


「えっ」


「つーか返事は?」


「え?なん、なに?」


「さっきの聞こえなかった?」




周囲からの大注目を浴びながら、唯くんがその綺麗な口でスゥ…と息を吸った。


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