唯くん、大丈夫?
鼻歌うたってスキップしながら教室へ向かうと、見慣れた背中。


「あ!唯くん!」


さりげなーくドロドロの上履きが入った袋を隠す。


「唯くーん!さっきぶり♪」

「……なんでスリッパ?」

「えへへ〜上履き忘れちゃったんだ〜」

「ふーん」


唯くんはそれだけ言ってスタスタ歩いて自分の教室へ入っていく。

そうそう。唯くんは優花に興味がなくていいの。

はぁーん、唯くんの後ろ姿やっぱりかぁっこいいなぁ〜!

…あ。唯くんがクラスの委員長に話しかけた!

最近よく話してるのを見かける。

そういえば文化祭のとき委員長に『九条くんは集客に使える』ってこき使われてたな。

唯くん、女の子と仲良しなの珍しいなぁ。



…おっと、予鈴!急げ急げ!



私はその時少しだけ痛くなった胸の声を無視して、てらちんに怒られる前に教室のドアを開けた。
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