今日から君の専属マネージャー
結局私たちは、いつも通りの生活を送ることになった。
ずぶぬれの涼ちゃんからお風呂に入り、私もお風呂を出た後、家にあったカップラーメンで夕飯は済ませた。
翌日の打ち合わせを軽く済ませて、夏休みの課題を進めて。
いつもの日課。
だけど、いつもとちょっと違う。
そう感じたのは、涼ちゃんとの距離感だった。
なんだかぎこちなくて、口数も少ない。
私と目を合わせようとしない。
「じゃ、明日も早いから、もう寝ろよ。おやすみ」
そっけない態度で、用が終わったらすぐさま部屋に戻された。
いつもは遅くまでついているリビングの明かりも、今日はすぐに消えた。
何か怒らせるようなことでもしただろうか。
思い当たることはたくさんありすぎる。
今日も仕事で失敗した。
それはいつものことだけど。
今日も負ぶってもらったからだろうか。
前より体重が増えて、重かったのかもしれない。
もしかして鞄の中の大事な資料はずぶぬれだっただろうか。
しっかり守ったつもりだけど。
それとも「ぎゃあ」がいけなかったかな。
こういう時、少女漫画のヒロインなら「きゃあ」だよね。
__「美鈴は、もっと危機感持てよ。
男に泊まってけばいいなんて、軽々しく言うなよ」
そんな涼ちゃんの言葉が頭によみがえる。
私だって男の人にそんな軽々しく泊まっていけばなんて誘ったりしない。
涼ちゃんだからだ。
涼ちゃんだからそう言える。
ほんとは、涼ちゃんと一緒にいたいから。
だけど、そもそも涼ちゃんは、私のことをそんな風には見ていない。
勉強もできなくて、体力もなくて、女子力もゼロなんだから。
吉田さんじゃあるまいし。
私に襲いかかるようなこと、ありえない。