巡る季節の中で、いつまでも君といられたら
春を告げる風
「…ありがとうございました」

手に握りしめた薬の紙を握りしめて、私は診察室の扉を静かに閉めた。薬の詳細が書かれた紙を通学用バッグの中に綺麗に入れて廊下を歩く。

この風景も見慣れたものだなあと思いながら足を進める。廊下でたまに会う看護師さんに会釈をし、目的地まで向かった。

私はかなりの虚弱体質で、よくこの病院で入退院を繰り返していた。その為患者さんの知り合いは多く、特に私の向かっている203号室のおばあちゃんにはお世話になったので検診に来る度に毎回顔を出している。顔を出すとおばあちゃんはにこにこと笑ってくれるため、私もその嬉しそうな顔を見たくてつい早足でそこへ向かった。
「あ、あった」

203、と書かれたプレートの前で私は足を止めた。コンコンと控えめにドアをノックする。

「失礼します。」

私はスライド式のドアを開けて、おばあちゃんに会える喜びを胸に病室へ入った。

しかし、その喜びは一瞬にして消えてしまった。

「…えっ」

ドアを開けて一番最初に飛び込んできた光景。そう、それは。

とても綺麗な男の子が、窓を開けて身を乗り出そうとしていたあまりにも異質な光景だった。
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