たとえ9回生まれ変わっても




ご飯のあと、わたしは自分の部屋に戻って、机に向かった。

来週からはじまる中間テストの勉強だ。

携帯からはさっきから、ポン、ポン、と軽快な音が鳴っている。

『勉強疲れたー』

『数学むずすぎ!』

井上さんと吉田さんだ。2人もテスト勉強中らしい。

わたしの携帯が、こんなにも忙しなく鳴り続けるなんて、いままでになかったことだ。

画面には次々と短い言葉やスタンプがあらわれては流れていく。

井上さんと吉田さんと連絡先を交換した。たまに話をするだけだったクラスメイトの2人が、日常的にやりとりをする関係になった。

アプリで3人のグループを作って、頻繁に連絡をとっている。

といっても、いつもメッセージを受け取るばかりで、わたしから何かを送ることはほとんどない。

グループを作ることに慣れている人からすれば、簡単なことなのだろう。

そうだね、とか、いいね、とか、スタンプをポンと送ればいい。

だけどこれでいいのかと迷っているうちに、2人のやりとりはどんどん進んでいく。

まるで実際に面と向かって会話しているようなテンポのよさに、わたしはあっという間においていかれてしまう。

きっと2人は、わたしがいないところでも、いつもこんな風に楽しそうに話しているんだろう。

その中に、わたしなんかが入ってしまっていいのだろうか。
話を中断してしまったりしないか。

どうしてわたしをグループに誘ってくれたんだろう。

余計な考えばかりが浮かんで、簡単な返事もできないでいる。
勉強はさっきからちっとも進んでいない。




< 57 / 157 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop