ずっと探していた人は
由夢のことを傷つけた達也くんに、同情する気なんて全くない。

けれど、由夢のことをきちんと大切に思ってくれていたことを聞くことが出来て、私が思うのはお門違いだと思いながらも、由夢の達也くんに対する思いが報われたような気がして、私は嬉しかった。

「達也と話していて、俺、思ったんだ。俺ももっと、加恋のこと、大切にしなきゃなって……。貸して?」

涼くんは私から紙袋を受け取り、袋の中から紙袋と同じ色をした水色のボックスが取り出される。

「サイズ、合うかわからないけれど」

涼くんが独り言のように呟く。

ゆっくりとあけられた箱の中からは、ハートの形に削られたダイヤがついているピンクゴールドの指輪が現れた。

「涼くん……」

「お店で一目惚れしたんだ。加恋に似合いそうだなって」

涼くんがそっと箱から指輪を取り出す。

「つけてくれると嬉しいけれど」

取り出した指輪を、愛おしいものを見るような眼差しでじっくりと見つめた後、涼くんはゆっくりとー取り出したときと同じようにー指輪を箱にしまった。

「今じゃなくていい」

涼くんは袋にしまいながら、私に告げる。

「今じゃなくていいんだ。いつか、つけたくなった時でいいから。その時は、つけてほしい」

真っ直ぐの眼差しと真っ直ぐの声が、私に届く。

「うん、わかった……」

本当は今すぐつけたい。

「ありがとう」って、笑ってつけたい。

けれど、きっと中途半端な気持ちで受け取ってはいけないものだということも、わかっていた。

そして今の私が、きっとつけないということも、涼くんにはわかっていたようだった。

「焦らなくて、いいから」

涼くんが私に微笑みかける。

「ちゃんと加恋がつけたいと思った時、つけて」

私はなんだか泣きそうになりながらも、笑顔でーきっと笑顔でー「ありがとう」と言った。
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