ずっと探していた人は
「滝川さんっ!!」

放課後、学校に来ている涼くんと待ち合わせをしている場所から、まだ誰もいない野球部のグラウンドをぼんやり見ていると、後ろから名前を呼ばれる。

「大橋くん!」

振り向くと、部室棟の方から徹と中川くんと歩いてくる大橋くんが手を振っていた。

「今から部活?」

「うん!」

練習着に身を包んだ大橋くんは、制服姿のいつもより少し凛々しい雰囲気が漂っていて、かっこいいなって思う。

「やっぱり大橋くんには、ユニホーム姿が一番似合うね」

「そうかな?」

思っていたことを口にすると、大橋くんは照れながら笑った。

先輩から嫌がらせを受けた一件以来、大橋くんとはすごく仲を深めたと思う。

【明日、数学テストだね】
【今日の英語の授業で聴いた音楽、良かったね】
【今日部内の紅白試合で先発させてもらったよ】
【今日も、中川くんは鬼になりました】

今まで大橋くんからは、用事があるとき以外連絡が来ることはなかった。

けれど一緒に早退をした日以来、何気ない内容のメッセージをくれるようになった。

“大橋のやつ、加恋が落ち込んでいないか、いつも心配しているんだぜ”

徹がこっそり教えてくれた通り、きっと私のことを心配してくれているんだろう。

練習も大変なのに、私のために気を遣わなくても良いのに……。

そう思う一方で、やっぱり気にかけてもらえることは嬉しい。

メッセージでのやりとりが増えるにつれ、自然に私たちは教室でも2人で良く話すようになった。


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