青に染まる
 入学当初から、その生徒の噂は立っていた。一言で言い表すなら、神童(しんどう)

 入学試験で全教科満点を採ったり他にも様々な検定試験で資格取得していたりと、雲上人(うんじょうびと)のような噂が飛び交っていた。その人こそ、僕と同い年らしい「白崎(しらさき)幸葵(こうき)」という人物。

 僕は最初、噂は噂に過ぎないと思っていた。何故ならあまり頭のいいとは言えない僕が入学できた学校に、その人がいるのだという。頭がいいのならもっと有名な学校があるだろうに、と思って噂を信じなかった。

 風の噂も七十五日。そんな感じでいつか消える都市伝説みたいな噂だろう、と思っていた。だが、その予想は七十五日も経たないうちに裏切られる。

 中間試験で成績の芳しくなかった僕は教師に呼び出され、ちゃんと勉強しなさいというのと共にその名前を耳にしたのだ。「白崎くんを見習いなさい」と。

 興味もなくて、見ていなかった順位表。どうせ赤点をとる自分が載っているはずもないのだ。見る必要はないと思っていたのだが、赤の他人の名前を出されたのが気になって順位表に「白崎幸葵」の名前を探しに行った。探すまでもなく、あった。

 「白崎幸葵」の四文字の明朝体はどの教科においても一番上にあったのだ。しかも満点のものがほとんど。

 そんな人物が同じ人間だとはとても思えず、しかも同い年と信じられず戦慄したのを覚えている。

 というか、あの都市伝説は本当だったのか。そんな馬鹿みたいなことを考えていた。

 先生曰く、「白崎くんは神童と称えられながらもそれに傲らず勉学に励んでいるからこの成績を保っている」のだそうだ。

 とはいえ僕だって、勉強をしていないわけではない。そんな簡単に満点が採れる頭なら、今このとき苦労はしていないのだ。
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