青に染まる
 まさか都市伝説というか学校の七不思議化しているとは思ってもみなかった。昔花が好きだった生徒が病で死に、思い出の花壇を整備しているという非常に和やかな七不思議が囁かれたらしい。

「でもよかったです。東雲さんみたいに真面目にやってる人もいるんですね」
「ちょ、その東雲さんってのと敬語は止してくれよ。同い年なんだし、タメでいいし名前呼び捨てで構わないから」

 鳥肌が立つから、と慌てる東雲さん──春子さんはぞわぞわしているようだった。まあ「さん」付けは春子さん女の子だし、多目に見てもらおう。

 彼女が今日来たのは当番だったの半分、興味本位半分なのだそう。

「七不思議の正体とか確かめてみたいじゃない」
「好奇心旺盛なんだね」

 怖いもの知らずとも言うが黙っておこう。

「それに、いつも先越されてばっかじゃ癪じゃない。緑化委員の名が廃るわ」

 もう廃ってるけどね、と春子さんはからから笑う。

 快活で素直な人なんだなぁ、と好印象を抱いた。同い年だけれど、クラスはちょっと離れているらしい。だから今この時に、情報交換までした。

「相談なんだけど、花の世話の仕方とか教えてくれない? あと、こういうの一緒にやろうよ」
「もちろん」

 願ってもない。花が好きな人に悪い人はいないからね。会って数分だけれど、こうして気楽に話せる人ができたのも収穫だ。
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