窓の中のラブストーリー
しかしながら、病は確実に少女の笑顔を隠して行きました。


世の中がクリスマスに煌めいている頃には、少女はもう自分でこの部屋から出ることも、大好きな歌を歌うこともなくなりました。


一度、大きな手術を頑張ってからも、結果は良い方向へは向かわなかったのでございます。


次第にこの部屋を訪れる人も減っていきました。

もちろん退院した患者や、来ることができなくなった患者もいたことと思います。

そうして、もの寂しい雰囲気がこの部屋に戻ってまいりました。



クリスマスの夜のこと。


担当の看護師さんが、夜中にこっそり忍び込んで来て、少女の枕元に小さなプレゼントを置いて行こうとしました。

結果は見事に失敗に終わりました。

少女はサンタさんに、プレゼントをもらう代わりに、お願い事をするため、眠らずに起きていたのでございます。


『あらら、大失敗。お髭ぐらい着けて来れば良かったわね。』

看護師さんはバツが悪気に照れ笑いしておりました。

『眠れないのかな?良い子で眠らないと、本物のサンタさんは来てはくれないぞ。』

少女はもう普通のサンタさんは、ママかパパであることを知っていました。

それでも、今夜はどうしても、本当のサンタさんに会って、お願いがしたかったのでございます。
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