敏腕パイロットのドSな溺愛~離婚するはずが、エリート副操縦士は最愛妻を甘く包んで離さない~
大地さんはひとりじゃない。頼もしい機長と力を合わせているのだ。

機内には機長と副操縦士の大地さん、CAが四名、乗客二百三十二名、計二百三十八名が乗っているそうだ。

「そろそろか……」

一時間ほど旋回した機体を見上げながら、お義父さまがつぶやいたときだった。

ものすごい勢いで誰かが駆け寄ってきて、お義父さまに耳打ちをする。

その瞬間、お義父さまの顔色が蒼白になった。

「忠司さん、どうしたの?」

お義母さまの問いかけに、お義父さまは唇をわななかせる。

「キャプテンの佐合くんが激しい腹痛を訴えて、操縦不能だそうだ」

「え……」

「今、大地くんがひとりで操縦席に座っている」

ひゅっと喉が鳴り、失神しそうになった。

倒れかける私を、お義母さまが強い力で支えてくれる。

「ちえりさん、しっかりしなさい! 大地なら必ず着陸を成功させるから!」

「でも……」

この緊急事態に大地さんがひとりで立ち向かっているなんて。

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