たぶんもう愛せない
<1ヶ月遅れの初夜>
弥生は意外と慎重だった。
だからこそ長い間義理の息子と不倫を続けられたし、私も気がついてなかった。
でも、知ってしまえばあちらこちらに綻びがあった、あの時の私は海を全面的に信じていたから見えるものも見えなくなっていた。

社長は本当に何も知らなかったんだろうか?

今は、とりあえず証拠を集めるための準備をしないといけない。

結婚する前に通販を使って小型カメラを買い集めた。まずは自宅のキッチン、リビングそしてベッドルームに取り付けた。
ベッドは他の家具を購入するときに一緒に買い替えた。

ソファとベッドの下にはスポンジを敷き詰めたタッパーを忍ばせていく。

弥生からLINEが入る
『テレビで魚の煮付が流れてるんだけど出来る?』

テレビをつけるとカレイの煮付けの作り方をやっていた。

『今夜、作ります』

『ありがと』
『それから、今日は掃除はいらないわ』

『了解しました』


カレイの煮付けかあ、夕飯はこっちも同じでいいかな。
そう言えば明後日は私の24歳の誕生日だ。
前回はまだ結婚していなかったから、一人ぼっちだった。誕生日は知っていたはずなのに祝ってくれたのは5日後、きっと弥生と会っていたんだろう。ひどい男だったけど岸は誕生日にホテルをとってくれて誕生石であるトルマリンのネックレスをプレゼントしてくれた。

そういえば、どうしただろう?

ふと気になってジュエリーボックスを覗くと、少ないジュエリーのなかに小さな小瓶に入れたトルマリンのネックレスが入っていた。

あった。
前回はゴミ箱に捨てたはずだけど、今回はバタバタしすぎて忘れていた。

今回、海はどうするんだろう?
誕生日は知ってるはずだけど、ただやきもち焼きのやよいが他の女、それが海の妻だとしても誕生日を祝うことに難色を示すかもしれない。

小瓶からネックレスを取り出すとそれを身につけた。
深い意味は無い、岸に未練もない。ただ、これをつけることで海に心を預けることはないという決意のようなものだ。
結婚指輪や婚約指輪は保険金のようなもの、かなりいい物をいただいたから海と離婚をした時には売るつもりだ。

それでも

元カレからプレゼントされたネックレスを着けるのは、なんとなく浮気をしている気分になる。

トルマリンの石を指で触ってから買い物に出かけた。

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