たぶんもう愛せない
「へぇー魚の煮付けか」

テーブルにはカレイの煮付け、きんぴらごぼう、冷奴と味噌汁が並んでいる。

「煮魚はだめだった?弥生さんからのリクエストだったの」

「いいや、こういう家庭料理ってあまり食べることがなかったから嬉しいと思って」

「お手伝いさんが作ってなかったの?」

「あっちの家は作ってたけど、俺は断ってたんだ。ほとんど外食だったから」

「そうなのね、喜んでくれたなら良かった」

食事を終えてドリップしたコーヒーを二つ持ってリビングに行くと海は長ソファに座ってタブレットを見ている。
海に一つ手渡すと、一人がけのソファに座ってテレビのリモコンを操作した。

「奈緒っていつもそっちのソファに座るよね」

「うん、なんとなく落ち着くの。狭いところが好きなのかも」

「ははは、猫みたいだね」

だって、このソファには永遠がいたから。
そして、そっちのソファでは・・・

「明後日って奈緒の誕生日だよね、外で食事をしよう」

「大丈夫なの?」

「奥さんの誕生日なんだから祝わないわけないだろ」

「ありがとう」

海との行動にズレが生じてる?
まぁ、結婚の時期も変わっているし、違う行動をすると結果は大まかには同じことを繰り返しているけど、細かいところで変わってきている。

「かわいいネックレスをしてるね」

ペンダントトップを手に取って「誕生石なの」と微笑む。

「誕生石ってオパールじゃなかったっけ?」

「よく知っているのね、オパールとトルマリンの二つある」

「そうか」
ほっとしたように見えたが、見間違いだろう。

「シャワーを浴びて先に寝ちゃうね」

自分のカップをキッチンで軽く洗った後、バスルームに向かう。

ネックレスをつけたままシャワーを浴び、鏡の前に立つ。左手でペンダントトップをいじる薬指にはリングをつけていない。

海には家事をする時に、傷つけたり無くしたりしてはいけないからと説明しているが、実際は海との関係のあるものを着けていたくないということと売るときに傷がない方がいいかもというのが本当の理由だ。ただ海は着けている。

単に、結婚しているのは周知の事実だからだろうけど。




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