たぶんもう愛せない
<証拠>
午前中に家事を終わらせると薬の処方箋をもらう為に病院へ行く。
海と結婚すると決めてから定期的に診察を受けている。本当なら、処方箋だけ貰えればいいんだけどシステム上やむを得ない。

病院の帰りにコーヒースタンドに入りミルクレープとホットコーヒーを頼んだ。

こんな風に一人でコーヒースタンドに入るのは結婚してから初めてだ。
窓際に座って通りを歩く人を眺めながら好きなケーキを食べてコーヒーを飲む。
一人のこういう時間が好きだった。

明日あの二人は弥生の部屋で逢瀬を楽しむのだろう。早く必要な証拠を揃えてお義父さまに伝えよう、でもお義父さまはショックを受けるだろうか?あの二人が仮面夫婦であることは間違いはないが情がないとも言い切れない、ただ確実なのは弥生のあのベッドでお義父さまは寝ていない。
男女の営みの後なんてなんとなくわかる。
前回の時に、時折、行為の跡があったのは弥生と海のだった。
二人が愛し合い楽しんだ後始末を私がしていたんだ。洗濯をしてアイロンをかけていた私をきっと弥生は勝ち誇ったように見ていたのかもしれない。


弥生が美容に必死になっていたのは海の為だった、そんなことも知らない私は弥生に憧れ、海に好かれたくて家事の対価でもらっていたお金でエステに通ったりしていた。
今度は“自分”のために“海”のお金で行こう。
どうせ、好きに使っていいと言われているし、以前の私のように遠慮するつもりはない。
若さなら私に軍配が上がる、あの女を煽ってあげよう。

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