レールアウト~婚約者に裏切られて彼の弟(生徒)にせまられます~番外編追加
──志保ちゃん、はじめまして
大きくて優しい手が私の頭にふんわりと乗せられた。笑うと少し目が垂れて、目尻に皺が出来る。
はじめて会った成央さんは、また幼稚部だった私の目に年上の男の子としてうつった。
父親の同僚の息子さんで、家族ぐるみの付き合いがあった。
──ねぇ。あの人、知り合いなの?
──中等部ですっごく頭がいいって、うちのお兄ちゃんが言ってたよ!
──かっこいいよねぇ
お父さんの会社の人の息子。
小学部に上がってから、周りの友達が成央さんの噂をしていて、有名なんだ、凄い人なんだって鼻が高かったのを覚えている。
──志保ちゃんは、大きくなったら何になりたいの?
家族ぐるみの付き合いがあって、成央さんの家で行われたホームパーティーの中。
誰にかは忘れてしまったけれど、そんな他愛ない質問だったと思う。
──私、幼稚園の先生になりたいです
別になりたかった訳じゃない。
ただ、クラスの女の子が言ってただけ。そこに私の意思があったわけじゃなかった。
──幼稚園教諭なんて子供と遊ぶだけだろう。先生ならまだ学校の先生のがまだマシだ
でも、冷たく言い放たれたその台詞は確実に私を凍り付かせた。
いつものこと。父は私の話を肯定なんてしない、するのは否定だけ。
威圧的で私自身を批判する父親。
自分の意見は通らない。聞いて貰えない。
──そうですね
慣れている筈なのに、その度に心の中になにか重いものが落ちていく。
胸の奥が鎖に縛られて、苦しくて息ができなくなる。